ひと足早いクリスマス(10)
人生、山あり谷あり。
そんな話をするうち、兄も私もどんよりとした気分になってしまった。
出るのは、ため息ばかり。
暗い空気を察した甥っ子は、父の部屋へテレビを見に行ってしまい、
義姉が気まずそうに、かといって、席をはずせずにいる。
何かきっかけを作らなきゃと、思いつくままに言った。
「お兄ちゃん、覚えてる?おばあちゃんの口グセ」
すると、兄はウンウンと頷いた。
「覚えてるよ。『人生、山あり谷あり』だろ」
「そう。物心ついた頃から、何かにつけて言ってたわよね」
『人生、山あり谷あり。いい時もあれば、悪い時もある。
負けるが勝ちの時もある。どんな時でも、まっすぐに生きて
いれば、必ずいい時が巡ってくる』
兄がクスッと笑った。
「何かにつけて、じゃないだろう。僕らが落ちこんだ時に言って
くれてたんだよ。励ましの言葉として」
「確かにそうね」
ようやく笑顔になった兄と私を見て、義姉も安心したようだ。
「コーヒー、おかわり入れましょうか?」
見ると、ずいぶんさめてしまっている。
「お願いします」
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