ひと足早いクリスマス(終)
楽しいひととき。
あたたかいコーヒーを飲み、一息ついたところで、兄が切り出した。
「さてと、そろそろ失礼しようか」
「そうね。高速(道路)も空いてる時間帯になったことだし」
運転するのは義姉。
兄は運転免許を取り損ね、甥っ子は免許取得可能な年齢に達していない。
乗せてもらっている身なのに、二人とも文句だけは人一倍。
地図を見ながら、
「こっちのほうが近道だ」
と言うとおりにしたら、一方通行を逆走しかける羽目になったり、
どんどん目的地から遠ざかったり。
カーナビをつけたので、やれやれと思ったら、
「テレビが見たい」
「面白いDVDがあるんだ」
と言う始末。
あげく、二人してグーグー寝る始末。
義姉が気の毒に思えてくる。
「ほんとに大変ねー。大きな子供を二人かかえて」
「ほんまっ!その通り!」
態度のデカい兄と、図体のデカい甥っ子。
女二人して大笑いである。
「さぁ、帰るぞー!」
兄が号令をかけると、甥っ子はまだテレビの続きを見ていたい様子で、
ゴロゴロしている。
幼い頃なら、
「ボク、お泊りする」と言うところだが、もはや高校生。
さすがにそんなことは言わない。
渋々腰をあげて、帰り仕度をした。
せっかちな兄は、
「じゃ、どうもどうも。お世話さまでした」
と帰っていき、追いかけるように、続いて義姉。
甥っ子は、いつも最後に我が家を後にする。
まず父に礼を述べてから、玄関先に居る母に挨拶する。
幼い頃から世話になった父と母には、礼儀正しい。
「有難うございました。また来ます」
「勉強、頑張りなさい。次はお正月ね」
因みに、私とは友達感覚なので、軽ーく
「じゃあね、またね」程度である。
三人が帰った瞬間、我が家は静けさをとり戻す。
「なんだか疲れたわねー」
「ほんとねぇ」
そう言いながらも、にぎやかに夕食をとり、たわいもない話をし、
一緒にテレビを見て笑う。
そんな楽しいひとときを過ごせたと、父も母も、そして私も大満足なのだ。
エッセイ「ひと足早いクリスマス」(終)〔2009年1月28日 by とうのよりこ〕
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