「我が家にWiiがやってきた」(1)
「我が家にWiiがやってきた」(1)
瑞希とご飯を食べに行ったときのこと。
ふとしたことから、冷蔵庫を買い替えたという話になった。
「この間、テレビを買い替えたとこでしょ?今度は冷蔵庫なの?」
私がそう言うと、瑞希は肩をすくめた。
「一気に寿命がきたみたいなのよ」
「突然バーン!」とブラックアウトしたテレビに引き続き、今度は冷蔵庫がブーンと異音を出し始めた。
「寿命だ」と電器店の店員に言われ、買い替えを決意したという。
パスタを口にほうばりながら、瑞希がぼやく。
「新しい冷蔵庫ね、冷凍室が一番下にあるのよ。いままでは野菜庫だったのね。だから、野菜を取ろうと思うと、ついクセで開けちゃうの。最初は慣れなくて、『どこ?ここか?』って、食事の支度のたび、母と2人で全部の扉をバンバン開け閉めしたわよ~」
冷蔵庫の前で悪戦苦闘している母娘の様子が目に浮かび、苦笑した。
すると、「いまは、もう慣れたわよ!」と、瑞希は念を押した。
「それより、もっと手ごわいものがやってきたの」
「手ごわいもの」と聞けば、自然と興味がそそる。
「なに?」
「Wiiよ」
私は聞きなおした。
しかし、答えは同じ。
「Wii」である。
なんでも、瑞希の父の古希のお祝いにと、弟の俊一が贈ってくれたのだ。
「そうなのよ。ついに我が家にWiiがやってきたのよ」
瑞希は目を輝かしながら、話を続けた。
とある日曜日。
俊一がプレゼントをかかえて、マンションを訪れた。
箱には、「Wii」と記してある。
両親にしてみれば、「コマーシャルでやってるもの」くらいの認識しかない。
贈られた父は、「なぜWiiなんだ」と訝しく遠目で見るだけ。
嬉々としてプレゼントを開けるのは、母。
そして、「これはなに?」と、しげしげ眺める。
弟の俊一が答える。
「それは『Wii Sports』。ソフトだよ。テニス、野球、ゴルフ、ボーリング、ボクシングができるもの」
「ええっ、そんなに出来ちゃうの?まあ、すごい」
次に開けたのは、「Wii Fit」。
今度は、母が聞く前に、俊一は説明した。
「テレビのCMでやってるでしょ。ヨガのポーズとか」
「あっ、のっかる台ねっ!」
のっかる台って、まあそうだけど。
とにかく母は無邪気である。
セッティングは、当然、俊一の担当。
彼の自宅にもあるので、手慣れたものだ。
その割に時間がかかるのは、彼が案外几帳面なせいで、配線がすっきりしないと気にくわないのだ。
追いうちをかけるように、横から母がつぶやく。
「線をぬいちゃったら、どこにさせばいいかわからなくなるから、わかるようにしといてね」
「あとで、印でもつけておくよ」
それにしても、マメな弟である。
瑞希は、彼の背中を遠目で見ながら、感心した。
さて、夕食のあと、はじめての「Wii」体験。
「何にする?」と、母が父に聞いた。
これは、父への贈り物だから。
「何でもいい」
父はあまり関心がなさそうである。
「じゃあ、ゴルフにしましょうか。俊一、ゴルフよ」
「はい、はい」
母に言われて、俊一はゴルフを選択した。
(つづく)
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