思い出は限りなく
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父方の祖父も母方の祖父も、
ワタシが産まれる前に他界したので、
おじいちゃんを知らない。
父方の祖母は小学生の頃、他界した。
母とは折り合いが悪かったため、ちょっと馴染みが薄い。
その代わり、母方の祖母は近所に住んでいたこともあり、
ずいぶん可愛がってもらった。
但し、これはワタシに限らない。
孫はもちろん、甥や姪、その子供達にまんべんなく愛情を注いだ。
もっとも母に言わせれば、
「我が子より、本家の子供を大事にした」らしく、
貧乏なくせに気前のいい、いかにも明治女そのものだったという。
子供の頃、病弱だったワタシは、しょっちゅう熱を出しては寝こんでいた。
母はワタシの看病ばかりしているわけにもいかず、
眠ったところを見はからって、買い物に出かけた。
目を覚ますと、母がいない。
急に不安になる。
そうはいっても、熱があるから、身動きがとれない。
そのうち、またうつらうつら眠る。
次に目が覚めたとき、枕元に祖母が座っていた。
心配そうに、ワタシを見ている。
「また熱、出したんか」
そう言って、おでこをさすってくれる。
ワタシは安心して、また眠りにおちる。
祖母は、母が帰ってくるまで、じーっと側に居てくれた。
社会人になった年、祖母は88歳で大往生をとげた。
思い出は、語りつくせぬほど。
晩年、寝たきりになった祖母は、実家が零落して神戸に
出てきてから結婚するまでのできごとを話してくれた。
いつか小説にしたいと思っている。
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