「グリーンに恋して」(1)
「グリーンに恋して」(1)
とうの よりこ
風が冷たい。
吐く息が白く宙を舞う。
かじかんだ手をカイロで温めながら、念入りに準備運動をする。
空を見上げると、太陽が雲のすきまから顔を出し始めている。
お天気になりそう・・・かな。
綾音は少し安心した。
どうにか雨に降られることはなさそうだ。
良かった。
冬のゴルフは寒さとの戦いでもある。
雨、ときには雪さえ降る。
身体が凍え、特につまさきの感覚がなくなる。
クツの裏についた雪が、枯れた芝とともに、やがて氷にかわる。
ティを使って、かき落としても、またすぐにつく。
「芝氷ができるのよ」
ゴルフをしない友人に話すと、
「そんな寒い思いまでして、どうしてゴルフをするの?」
と、呆れられた。
「寒風吹きすさぶなか、寒い思いをして。夏は夏で、日に焼けるし、熱中症にかかっちゃうでしょ。まったく、ゴルフに熱中する気が好きしれない」とも。
ゴルフをしない人にとっては、そうかもしれない。
太陽がギンギンに照る暑い夏、凍える冬。
そんな季節は、さすがに「修行をしている気分」。
だけど、ゴルフをやめようとは思わない。
好きなことに理由なんてないもの。
練習グリーンに目を遣ると、数人の男性がパッティングをしていた。
パターを持って、降りていくと、1人の男性が綾音に気づき、「おはよう」と声をかけてきた。
専務の高田である。
(つづく)
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コメント
この小説は、これから連載が始まるのね
綾音と専務の高田・・・二人は単純にゴルフを楽しむのか
それとも・・・
これからの展開を期待しております
でも、さぶい中でしか味わえない、この気持ち!
スノボやスキーをしている時も同じ、
吹雪の中にリフト乗って、凍えながら、滑っての繰り返し
投稿: hyde | 2010年1月21日 (木) 08時50分
見切り発車で始めてしまいました。
ま・・・、できるだけ書き続けていきます。
スノボやスキー、されるんですね。
毎週くらい行かれるんですか?
投稿: yoriko | 2010年1月22日 (金) 00時03分
以前は、岐阜を中心に行ってましたが
今は、めっきり、ご無沙汰です~
道具は、押入で元気なのでしょうか・・・?
投稿: hyde | 2010年1月22日 (金) 08時53分