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母のこと(29)

父の提案で、買い物に行こうということになった。
朝起きて、少し体調が悪かった母だったが、
「買い物」と聞くと、急に元気になり、「今すぐ行こう」と言った。

日曜日のお昼となると、大丸、そごうは人が多い。
ハーバーランドのイズミヤか、ライフか。

「ライフなら、家族亭があるね・・・。ライフにしようか」
ということで、ライフに決まった。
「タクシーで行こう」と父。
「車、出すよ」
「いや、(ワタシが)疲れるから、やめとこ」
「ああ、ワタシがヒステリーを起こすから、やめとこうってことね」
と言うと、ニヤッと笑う父。

表通りまで行き、タクシーを拾った。
車椅子からタクシーに乗せるまでがひと苦労。
着いたら、タクシーから車椅子に乗せるのも、またひと苦労。
こっちも大変だが、当の母も、なんだかぐったりしている。

席に着くなり、
「疲れた。帰りたい」
出かけるまでは、あれだけはしゃいでいたのに、である。
「せっかく此処まで来たから、お蕎麦だけは食べて帰ろうね」

この頃は、食べるときも少し介助が必要なので、ワタシはささっと食べなければならない。
母は、前歯が2本抜けたせいか、よくこぼす。
こぼした蕎麦をとったり、蕎麦をお椀にうつしたりと、案外忙しい。

家族亭を出て、イズミヤへ入ると、ミスタードーナッツの出店を見つけた。
「ドーナッツ、買って帰ろう!」
母も嬉しそうに選んだ。

すぐにでも帰りたい母だったが、父がイズミヤの店内をぐるっと一周だけしようと、車椅子を押して行った。
ワタシは、急いで夕食のおかずを見てまわり、入口で待つ両親と合流し、タクシーを拾い、家へ帰った。(結局、また三宮へ買い物に出かけたのだが。)

家に着き、ぐったりした母を部屋にあげるのも、ひと苦労だった。
やはり久しぶりの買い物に疲れたのだろう。
息苦しい様子だったので、酸素吸入をした。

少しすると、楽になったのか、「ドーナッツ、食べる」。
何かを食べたいと言うのは、元気になったというサインだ。
ただ、食べることしか楽しみがないので、好きなようにさせているが、
食べたあと、必ず、「お腹いっぱい。胃が苦しい」と言う。
胃薬を飲み、「苦しい、苦しい」とうったえ、
しばらくして、調子がもどると、またお菓子を食べる。
この繰り返しだ。
そして、決まって言うセリフは、
「明日になったら、食べれないかもしれない」である。
もしかしたら、そうかもしれないと思う父とワタシは、つい甘くなり、せっせと胃薬を飲ませている。

さて、次の買い物は・・・。
もう少し歩く練習をして、母が自信をつけてから、ということになった。

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