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母のこと(54)

母の病室が一般病棟から療養型へ変わり、
「お母さん、大丈夫かなぁ?」
と、父がずいぶん心配している。
「日曜日、午後から様子を見てくるわ」
「頼むわ」

病室が寒いと聞いていたので、起毛タイプの肌着と靴下を用意した。
差し入れには、そごうのTAKANOでフルーツプリン、和菓子とラムネ。
途中、ホットレモンを買った。

病院に着き、エレベーターが降りてくるのを待った。
ドアが開くと、車椅子に乗った母が現れた。
「あ! よりちゃん」
「今からリハビリ?」
「今から帰るとこやねん」

帰りたい病はおさまっていないようだ。
リハビリ療法士に、よろしくと頼み、
肌着と靴下を預けるため、病室へ向かった。
ナースステーションをのぞいたが、出払っているのか、誰もいない。
病室はどこかとさがしながら、廊下を歩いていくうち、
父が心配していたことがわかった。
やはり療養型病棟は、一般型とは雰囲気が異なる。

ようやく看護師さんを見つけ、肌着と靴下を預けた。
「寒がってませんか? 毛布を持ってきたほうが良いですか?」
すると、看護師とヘルパーさんが笑って答える。
「お布団をけっとばしてますよ」
「そうですか・・・」

しばらくして、母が帰ってきた。
どういうわけか、リハビリ療法士をひどく嫌がり、
「この人の言うことを聞いていたら、ロクなことがない!」
と怒っている。

「歩けないと、退院できないわよ」
「歩けなくたって、タクシーで帰れば良い」
「そりゃ、タクシーに乗れば帰れるけどさ・・・」
「でもね、お母さん、無一文やねん。この人(リハビリ療法士)も無一文やねん」
「そうやね、お父さんがお金持たせてないもんね」
「お父さんに置いておくように言っといて」
「はい、はい。じゃあ、ちょっと歩いてみせてよ」

しぶしぶ母は立ち上がり、歩いてくれた。
「すごいねー。この分だと、退院も間近ね!」
しかし、母の表情はこわばったままだ。
手足をさわると、ひどく冷たい。

「いつもは、病院着を下に着てるんですけど・・・」と、リハビリ療法士。
内心、気づいた時点で対処してくれたらすむことじゃないの、と思いつつ、
すぐヘルパーさんを呼び、手足が冷えきっていることを伝えた。
ヘルパーさんは、すぐ対応してくれた。

着替えが終わり、一般病棟のディルームへ向かった。
今の病棟は、プリンを食べるにも、なんとなく食べづらい。
一般病棟に着くと、ヘルパーさん達が歓迎してくれた。
母の表情に、ようやく笑顔がもどった。

プリンを食べると、横になりたいというので、病室へもどった。
横になると、胃が苦しいという。
痰がからみ、ゴロゴロいっているので、看護師さんに吸引してもらった。
しかし、すぐにはとれない。
気持ちが悪いといいながらも、
「何か食べたい」と言うので、和菓子を食べさせると、またゴロゴロする。
うがいをし、痰を出すよう促すと、少し落ち着いた。

「そろそろ帰るね。明後日、また来るから」
「明後日まで来てくれないの?」
「明日は仕事だよ。何かあったら、お父さんを呼んで」
「お父さんを呼んでも、しようがない」
「あら、そう? さっき、看護師さんが『お父さんを呼んで!って言ってます』
って言ってたわよ」
「・・・」
「じゃあね、看護師さんによく頼んでおくからね」

明後日は、院長との面談である。
退院のメドを聞く予定だが、ケアマネージャーも同席するので、気が重い。
父に何度もケアマネージャーを変えるよう頼んだが、
「どのケアマネージャーになっても、大して変わらんやろ」と、父。

ケアマネージャーの力量不足のツケは、家族にまわってくる。
だから、見切りをつける時期にきている、と私は思う。

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