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母のこと(71)

昨年、父に
「お母さんから、2つの銀行の通帳を預かってるんやけど、印鑑もわからんし、暗証番号も定かではない。あっちこっちの銀行へ行くのはムリやから、ひとつの銀行にまとめたいんやけど・・・」
と相談された。

休暇をとり、2つの銀行へ聞きに行ってみた。
複数の印鑑を持って行ったが、どれも照合しない。
「印鑑をさがしていただくのが一番早いのですが・・・」
「他にはもうありません」
「では・・・紛失届けをしていただいてから、解約となります。ご本人様はお越しいただけますか?」
「入院しているので、ムリです」
「それでは、病院へうかがって、ご本人様に面談し代理人を指定いただくか、成年後見制度を利用いただくか、となります」
2行とも回答は同じだった。

成年後見制度となると、申し立てから開始まで期間も必要となるだろう。
父と相談し、母に会ってもらい、代理人を指定する方式を選択した。
どうせなら一度にすませてしまおうと思い、2行と父のスケジュールを調整し、先に本人承諾を終えた。

年末、ひとつめの銀行の手続きが完了。
今日は残り1行へ行き、手続きをしてきた。
年越しになったので、ちょっと肩の荷がおりた感じ。
すでにデパートのカード解約もしたし、ひととおりの整理はついた。(と思う。)

その足で、病院へ行くと、
「頭がおかしい」と、ベッドでうなっていた。
「昨日、芦屋大丸へ行ったから、曙の海苔巻きを買ってきたよ。食べる?」
「何も食べてないねん! 食べる!」
「お昼ご飯、食べたでしょう?」
「私、食べた?」
「食べたよ。だって、お口のまわりに(食べかすが)ついてるもん」

ホットタオルで顔と手を拭き、化粧水をつけると、機嫌が良くなった。
先にプリンを食べてから、海苔巻きを口に入れた。
「美味しいけど、かたい」
「かたい?  うーん・・・、お母さんが好きなのは、とよすの品川巻よねぇ。あれ、もう売ってないんだって」
「(曙の海苔巻きは)かたいから、左では食べられへん」
見ると、左下の歯がぐらぐらゆれている。
じき、この歯もまた抜けてしまうだろう。
今の歳まで、すべて自分の歯が自慢だった母。
ところが、一本抜け、また一本・・・となくなっていく。
食べることしか楽しみがないというのに、思えばかわいそうだ。

「やわらかいものが食べたい」
「ツマガリのクッキーは?」
「食べる」
「文明堂の抹茶カステラ、食べる?」
「食べる」

ひとしきりお菓子を食べると、次はトイレである。
ヘルパーさんにお願いし、車椅子でトイレへ連れて行ってもらった。
いつもは夕食まで傍にいるが、今日は別の用事があったので、帰ってきた。

私が帰ったあと、母はどうしているのだろう。
またすぐ戻ってくると待っているのか・・・と思うと、切なくなる。

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