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母のこと(68)

手作りフォトスタンドに、元旦に撮影した写真を貼り付け、
母のもとへ持って行った。
ものすごく感激してくれるかと思いきや、
「何か食べたい」と、食欲優先である。

干し柿、焼き菓子、柔らかいおせんべいを食べ、
紅茶を飲み、ひと心地。

「お醤油のついた、おかきが食べたい」
「おかきは・・・ないねぇ」
おかきは、ノドにつまりやすいので、避けてほしいと
言われているので、置いていない。
言い出すと、きかない人なので、父に電話した。
(困ったときの父頼み)

「もしもし、ああ、私」
電話口のむこうで、父が「元気か?どうや?」と気遣っている。
「あのねぇ、お醤油のついた、おかきが食べたい」
「お醤油のついた、おかきが食べたいの?
  今度行くとき持っていくわ」
「今度って、いつ?」
「来週の月曜日かな」
「3日後?  えらい先やねぇ」

父と話をしている間、私は中腰で、母の耳元に携帯をあてて
いるので、苦しい体勢である。
腰も痛くなってくるが、せっかく機嫌よく話をしている母のため。
じっと辛抱、辛抱。

ようやく電話が切れ、
「お父さん、なんて?」
「よりちゃんと買いに行くって言っとった」
「お父さんと?  行かへん、行かへん。
  お父さんと買い物に行ったら、倍時間がかかるもの。
  私がとよすで海苔巻きを買ってくるわ」
「そうそう、とよすの海苔巻き。持ってきてよ」
「はい、はい」

母は、デパ地下ショッピングが大好きである。
たとえば、マロングラッセ、チョコレートは、メリー。
洋菓子は、アンリやアンテノール。
おかきは、とよす有庵。
パンは、ドンクやアンデルセン。
お惣菜は、ロックフィールド、豆藤、ポートピアホテル。
そして、スーパーならいかりスーパー。
だいたい決まっている。

毎日、三宮へ買い物に出かけては、
父と私の好きなものを買ってきてくれていた。
買ってきたものは、その日のうちに食べ、
残ったものは処分してしまう。

一方、父は「捨てるなんて、もったいない」と言い、
何日も食べ続けるので、よくお腹をこわす。
今夜も、「やめといたほうが良いんとちがう?」と忠告したが、
すき焼きの残りを食べ、案の定、気持ち悪いと言い出した。

よく母が、
「お父さんは、意地汚いから」と言っていた。
実に、的を得た言葉である。

ときどき母は、冴えたいことを言う。
「首が痛い」と言うので、首をマッサージした。
「どう?」と聞くと、
「どうって、ギンくらいかな」
「ふーん」
一拍おいて、気づいた。
「ああ、銀ね!」
どう=銅 に対して、ギン=銀 という答えである。

金(キン)を得ようなんて、所詮は無理なこと。
ほとほと母には、太刀打ちできないのである。

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