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母のこと(70)

土曜日、母のお見舞いに行ったとき、
「あのー、こんなに洗濯物がたまっているのですが・・・」
と、ヘルパーさんに聞かれた。
「え?  クリーニングをお願いしてますけど?」
「ええっ?」
病院の手違いだった。
入院したときは4Fで、病状が落ち着いてから3Fに移った。
大腿骨頚部外側骨折の手術を受けることになり、再び4Fに戻った。
このとき、うまく引継ぎがされなかったようだ。

肌着は半袖が1枚、靴下は数足予備があるが、クリーニングに出すと、約2週間かかるという。
自宅にどのくらい残っているかわからなかったので、1セット持ち帰って洗濯することにした。

「明後日あたり、持ってきますわ」
「それじゃ、ベッドから起きたとき、髪の毛が逆立つので、帽子も持ってきてくださいね」と、看護師さん。
「帽子?」
「ツバのないものね。お顔が見えないから」

母に聞くと、
「黒い帽子があったでしょ。あまりツバが広くないの」
「さがしてみるわ」
と答えたものの、母が言っているのは外出用の帽子だろう。
部屋の中でもかぶっていられるものが良い。

昨日、大丸へ出かけた。
まず介護用品の店で聞いたところ、バンダナしか置いてないという。
母が身に着けたときの姿をイメージする。
・・・ちがうな。

1Fの帽子売り場で、ツバのないニット帽をいくつか試してみた。
良いなと思うものはマキシンの帽子で、案外、高い。
もう少しお手ごろなものはないかと、店員さんに聞いた。
「入院中の母の帽子です。寝ていても違和感のないものが良いですね。色は黒で・・・」とつけ加えると、
「同じご要望のお客様がいらっしゃって、おすすめしたものがございます!  少々お待ちくださいませ」
持ってきたのは、マキシンのシルクの帽子。
薄くて軽く、手触りも良い。
ただ値段は少々高め。

母がかぶったときのイメージは・・・ピッタリ!
お正月のプレゼントにしよう。
支払いは・・・たまっていたポイントで払おう。

帰宅してから、帽子に名札をとりつけた。
裁縫は大の苦手であるが、母のため。仕方ない。
ついでに、予備のカーデガンも持っていこうと思い、2枚とりつけたら、グッタリ。
明日は午後からゆっくり病院へ行こう・・・なんて考えていたら、とんでもない一日になってしまった!

朝起きると、とにかく首筋から頭が痛い。
朝食をとり、整形の薬を飲み、少し休んだ。
うつらうつら眠って起きると、ますます痛い。
吐き気までする。
朝食べた、生クリームたっぷりのパンがいけなかったのか?
しまいには、吐いてしまった。
胃腸薬を飲み、しばしダウン。
少し眠ったらしく、母の夢を見た。
行方不明と心配する夢だった。

ハッと起き、少し気分が良くなっていた。
夕食の準備をしてから、3時半すぎに出かけた。
駐車場までの道のりを歩いていると、なんだかフラフラする。
考えたら、朝のパンは吐いたし、そのあとまともに食べていなかった。
今さら食べても中途半端になるので、ガマンすることに。

病院に着き、看護師さんに、持ってきた帽子、服、下着類を記録してもらい、母の病室へ。
ドアを開けると同時に、「よりこー」と母。
「はい」
「よりこ?  ホンモノ?」
「ホンモノです」
「ああ、よかった」

さっそく帽子をかぶってもらう。
やっぱり似合う。
「マキシンの帽子なら、高かったでしょ。そんな高いものでなくても良いのに」
「6,500円だったかな。お正月プレゼントってことで」
母は機嫌よく笑った。

あとはいつものごとく感情の起伏激しく。
お菓子を食べると、いったんおさまり、しばらくすると、気分が悪いとうったえる。
「今日は私も体調悪いからね。あんまりムリ言わんといて」
「お母さんは、もっと体調悪い!」
まったく、減らず口健在である。

夕食の時間になり、ディルームへ向かうと、他の患者さんから、
「あら、かわいい帽子!」
と絶賛された。
当の本人は、すまし顔。
ちょっとは愛想笑いでもすれば良いのに。
「かわいいでしょう。今日持ってきたんですよ」
横で、親バカならぬ、娘バカである。

「じゃあね、よく食べて、よく寝てくださいね」
「帰るの?」
「今日は具合が悪いから帰るよ。バイバイ」

帰宅して、夕食をとり、そのあと1時間ほど寝た。
まだ痛みがとれないので、早めにお風呂に入り、コリをほぐした。
本当にグッタリの一日だった。
早めに寝よう・・・、って、もう10時半!
このぶんだと、またすぐに眠れず、睡眠不足になる・・・。

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