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2014年3月

母のこと(85)

日曜日は朝から大雨のようなので、土曜の午後、母のもとへ行くことにした。
高熱を出して寝込んでしまった父が持っていくはずだった、春用のシャツ 3枚、ウェストのゴムをゆるめにしたズボン、いちごとカステラ、紅茶を持って。

特養では、来所時、受付カード(*)を書く決まりである。

(*受付カード)
  ・来所日
  ・入所者名と居室番号
  ・来訪者名と続柄
  ・来所時間

書き終えて提出すると、
「今日はオープン2周年記念日なので、1Fラウンジでたこ焼きを作っています。是非、お母さんと来てください」と事務所の人に言われた。

たこ焼きは、母もワタシも大好物である。
あとで父が聞いたら残念がるだろう。
「たこ焼き、たこ焼き♪」と、浮かれ気分で、母の居室のドアを開けた。
すると、入口すぐのところで、母が床にへたりこんでいた。

「どうしたの?」
「トイレに行って、そのあと、ここで・・・よりこを待ってた」

自力でトイレへ行ったのか?
定かではないが、ともかくヘルパーさんを呼ばなくては。
床にへたりこんだ母を立ち上がらせることは、今のワタシには到底出来ない。
呼び出しベルを鳴らすと、ヘルパーさんがすぐ来てくれた。

「あれっ?  なぜここに?」
「トイレへ行った」と母。
「トイレですか?」
「すみませんが、車椅子にうつしてもらえます?」
「はい、じゃあ兄ちゃんの腰もってくれる?」
男性のヘルパーさんは、軽々と母を起こし、車椅子に乗せてくれた。

「今日はお昼ごはんを食べてないんですよ。『いらないっ!』・・・って」
「お母さん、なんでお昼食べなかったの?」
「知らん。私のこと、忘れられとったんやわ」
「いや、忘れてませんよ・・・」と、ヘルパーさんも困った表情を浮かべる。

母は、とにかく気まぐれな人である。
気分が向かないと、食べないし、ヘルパーさんの言うことも聞かない。

「今日のおやつはお好み焼きなので、2時半くらに、北側の食堂へ来ていただけますか?」
「お好み焼き?  1Fのラウンジで、たこ焼きやってるみたいですけど・・・」
「ユニット居室は、お好み焼きなんですよ」
そう言って、ヘルパーさんは部屋を出て行った。

車椅子をテーブルの前に移動させ、持ってきたいちごと紅茶を並べた。
「お父さんがいちごを買ってきてくれたんよ。お昼食べてないんだったら、お腹すいてるでしょ」
「すいてる。食べる」
練乳をかけたいちごを、さっそくほうばる母。
幸せそうな笑顔だ。
「あとねー、春用のシャツも買ってきてくれたよ。いいでしょー」
ハンガーにかけ、母に見せると、
「あ、かわいいー」と、喜んだ。

「お父さんね、水曜日から熱出してんの。いったんひいたんだけど、金曜日にヤマザキへおにぎりを買いに行ったら、夜また熱出してんの」
「冷たい風にあたったからや」
「そうやろね。お母さんにカゼうつしたらアカンって、来るの、ガマンしてるわ」
「ふーん・・・」と、やや寂しそうな表情を浮かべる母。
「あ、お母さん、お好み焼きとたこ焼き、どっちがいい?」
「どっちでもいい。人が少ないほうがいい」

PTAや婦人会、お稽古事など、大勢の人達に囲まれ、常に中心にいた母。
だが、要介護になってからというもの、母は別人のように、人から遠ざかるようになった。
今の自分を見られたくない、と言わんばかりに・・・。

「じゃあ、1Fのたこ焼きへ行こうか」
エベレーターを待っていると、母のことを『かわいい』と言ってくれる女性のヘルパーさんに呼びとめられた。
「いまからお好み焼きパーティをやるので、是非来てください」
「たこ焼きへ行こうと思ってるんですけど」
「ちょっとだけ顔出して。ね、お願い!  あとでたこ焼きへ行かれては?」
せっかくのお誘いなので、顔を出すことにした。

1フロア全体の入居者が集まっているので、普段より人数が多い。
こういうとき、母は凛とした態度をとる。
”私はここにいる人達とはちがう。” と主張しているかのように。

突然、クラッカーを渡され、
「合図をしたら、鳴らしてください」と頼まれた。
フロアリーダーの「せーの・・・!」という合図で、クラッカーを鳴らした。
割と大きい音だったので、ビックリしてのけぞるお年寄りもいた。
「2周年、おめでとうー!!!」
入居者の方々より、ヘルパーさん達のほうが、大はしゃぎである。

ホットプレートで焼いたお好み焼きが配られた。
いつもと変わりなく、皆さん 静かに、黙々と食べはじめた。
20140329_2 

母に「おいしい?」と聞くと、小さな声で、「あんまりおいしくない」。
とはいえ、お腹はすいているので、平らげた。
食べ終えると、そわそわし始める。
これ以上、ここにいたくないのだな。
ヘルパーさんに1Fへ行く旨を伝え、その場を後にした。

1Fのラウンジに着くと、男性のお年寄りが一人、たこ焼きを食べていた。
ケアハウスに入居している人だろうか?
平らげると、「ごちそうさん」と言って、出て行った。
そのあと、ラウンジは、母とワタシの貸切となった。
「やっぱりこっちのほうがいい」と母。
母は人が多くガチャガチャしたところより、静かなところのほうが落ち着くのだ。
二人で、アツアツのたこ焼きを 6個、いただいた。
割と美味しかった。

「ご馳走さまでした。父が聞いたら残念がります」と事務所の人に言うと、
「いつも帰りにコーヒーを飲んでいただいてますよね」
「ええ、100円で飲めて美味しいからって」
「今日は?」
「熱出して、寝てます」
「あらー。じゃあ、これ、お土産にどうぞ」
「え?  ありがとうございます。喜びますわ」

・・・父にしろ、ワタシにしろ、もしかして、ちょっと有名になってる?
いやいや、気のせいだ。

部屋にもどり、父に電話をした。(ワタシは携帯電話を持つ係)
父との電話は、母にとって、ささやかな楽しみである。
「たこ焼きを食べてきた。お父さんの分も買ってるからね。シャツ、ありがとう。嬉しい。元気になって、はよ会いに来て」と、楽しそうに話をしていた。

電話のあとは、少しぐったり。
一気に食べて、一気にしゃべったせいだろう。
「苦しい」と言うので、ベッドに寝させ、お腹をさすっていると、
「記念写真を撮りますので、来てください!」と、ヘルパーさんが呼びに来た。
「行きたくない」
「食べ過ぎたみたいなの」
「食べ過ぎだったら、大丈夫。せっかくの記念写真だから、一緒にうつりましょう!  皆さんに待ってますよ。さあさ、起きて!」
無理やり起こされ、しぶしぶ向かう母。
ついでに、ワタシも記念写真に飛び入り参加させられた。
『ご家族と楽しく 2周年記念パーティ』という吹き出し付の写真になるんだろうな。

再び部屋にもどると、
「お腹が痛い。死にそうなほど苦しい。こんな苦しい思いをするんなら、もう生きていたくない・・・」と、母のグチが始まる。
さすがにワタシも疲れてくる。
「そういえば、今日おかき食べてないねー」
「おかき食べる!」
「死にそうなんとちがうの?」
「おかきを食べたら、元気になる」

母の言うとおりだった。
身体を起こし、おかきを差し出すと、ポリポリと食べ始める母。
さっきまでの苦しさがウソのように、ふっとんだ。

もう少ししたら、晩御飯だけど・・・、まあいいか。
好きなものを食べている間は、ご機嫌さんなのだから。
四角四面にやっていると、こっちも息がつまってくる。

夕食がはじまり、
「ちゃんと食べないと、お薬もらえないわよ」と言って、特養を後にした。
母の寂しい一週間が、また始まる。。。

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かけこみ買い

朝のテレビで
「消費税増税前、買うべきもの/買わなくてもいいもの」を紹介していた。

ハタと気づいた。
何も買ってない。
それに、車の6ヶ月点検も忘れていた。
これは料金が変わるものではないので、3月中にすませとこう。

というわけで、今日休暇をとった。
朝、車を取りに来てもらい、洗濯をすませたあと、市バスで三宮へ向かった。

まずドコモへ。
そろそろ携帯の機種を変更したいと思っていたので、ちょうど良い機会だ。

店に入ると、
「機種はお決まりですか?」と声をかけられた。
「スマホじゃなく、Nのガラケーを」
「データ移行等で、約50分かかりますが・・・」
「えー、そんなにかかるの?」
「できるだけ早く対応します」

とはいえ、ひさしぶりの機種変更なので、あれやこれやと機能を確認してしまう。
契約をすませ、データ移行の間、待っているのはもったいないので、
「ヤマダ電機で買い物してくるので、あとで取りにきます」とお願いした。

先にオーエスドラッグとサンドラッグで買い物をしてから、ヤマダ電機へカラープリンタを買いに。
フロアに着くと、6,900円の値札商品があった。
値段につられて立ち止まると、テレビショッピングのごとき口調の店員が近寄ってきた。
「これお買い得ですよー」
コピー機能もあり、とにかく安いと、長々説明する。
「もうひとつ上の機能なら?」
「それでしたら、こちら! 13,500円。もとは20,000円してたんですけど、値下げしました。用紙もセットしておけるし、自動両面もできますし・・・」
またまた説明が長いので、途中でさえぎった。
「あ、これにします。送料いくらです? 去年、和田岬店から送ろうとしたら、1,000円って言われたから、やめたの」
「ご住所は?・・・ああ、それなら、500円です」
「店によって違うのねー」
「そうですね。用紙もおつけしますので。ありがとうございます!」
・・・たいてい用紙はつけてくれるよ・・・とは、言わなかったけど。

支払いをすませ、ドコモへ行くと、データ移行も完了していた。
携帯を買い換えると、なんだか嬉しい。

そのあとイカリへ行き、ポイントカードで1,000円の割引券を発行し、お買い物。
昨日から父が高熱で寝込んでいるので、
「何が食べたい?」と聞くと、
「美味しいもの」
「うーん、イカリの海老チャーハンとか、好みちゃんとか、焼き豚はどう?」
「なんでも良い」
とりあえず、ひととおり買って帰った。

「病院へ行った?」
「ああ、行った。薬もらってきた」
「熱は?  はかってみて」
熱は幸い下がっていた。
食欲ももどったようで、安心だ。

「携帯変えたよ。あと、プリンタをようやく買いました」
「消費税あがるって言ったって、何百円の差やろ」
「それはそうだけど、こういうときでないと、なかなか買おうと思わないし」
「そうか・・・」

こういうとき、母なら、なんだかんだと相手をしてくれるんだけどなぁ。。。

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気づけば、ふな嬢

ふなっしーに恋する女性のことを「ふな嬢」と呼ぶらしい。
「~嬢」という響き自体、好きではないので、
もうちょっとらしいネーミングはないものかしら。

なになに、どんな人のこと?
調べてみると・・・

「行列のできる法律相談所」でおなじみの大渕愛子弁護士。
「この正月、12月28日から1月4日までの休みを利用して、ふなっしーのDVDや、テレビ番組にふなっしーが出演した部分だけを残して編集したものをずっと見ていた」

・・・・・。

ワタシも、年末の紅白から気づいた範囲であるが、
ふなっしーが出演するテレビはだいたい録画して、出てるところだけ編集して、HDDに残している。
「ふなのみくす」も衝動買いした。

寝る前、ぼーっと見て、なんとなく癒され、眠りにつく。

え?  ええーーーっ!?
気づけば、ふな嬢!?

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母のこと(84)

日曜日、少し体調も回復したので、母のもとへ。

ウェストのゴムをなおしたズボンと、
ヘルパーさんから頼まれた ベッド柵カバー用になりそうな
バスタオル、お古のひざ掛けを持って行った。

部屋へ向かうと、
「離してぇ!  離してったら~!」と、威勢のいい母の声。
見ると、母がヘルパーさんの腕をつかんで、声をあげていた。

「どうしたん?」
「あ、妹!」
「ワタシは娘です」
「娘、よりちゃん!」

母の握力は、年の割に強いので、男性ヘルパーさんの腕はうっ血しかかっている。
「大丈夫だから、離そうね」
「つかまえてんねん!」
「お母さんが離してくれないと、私もこの人も身動きとれないよ」
何度か説得し、ようやく手を離した。

母はときどき不穏になる。
寂しさもあるのだろう。
娘としては、週1回 顔を出したいのだが・・・
先日、特養の担当者会議での施設側の回答は、
「ご心配なのはわかりますが、特養に慣れてもらわないといけないので、
月1回くらいの訪問にしてください」であった。

施設側の意図も理解できる。
理解できるが、母の顔を見ていると、切なくなる。

この日は、部屋でおしゃべりしたり、
(前日ダウンしていた身体にむちうって)
母の身体をさすったり、
1Fのラウンジでお茶とケーキを食べたり、
文字どおり  母の好き放題をさせてしまった。

ああ、また母を甘やかせてしまった。

いや、ワタシが母に甘えていた、というのが正解か・・・。

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花粉症ゴルフのあと

3月後半ともなれば、気温も上がり、快適ゴルフが楽しめるだろう・・・
と思って、のぞんだ 3/21。

朝の気温からすると、寒そう。
慌ててブルゾンをバッグに入れて、神有カントリー倶楽部へ。
車中、フロントガラスに、降るは  みぞれ・・・!

ラウンド中も、チラホラ雪が舞い、ほんとに寒かったのなんの。

何よりまいったのは、花粉症。
前日から、鼻がムズムズしていたが、寒さもあってか、ひどくなる一方。
他のメンバーも、くしゃみ連発だった。

帰宅して、くしゃみがとまらないワタシを見て、
「カゼか?」と父。
「花粉症だと思う。さっきアレルギーの薬を飲んだよ」
しかし、くしゃみはとまらない。
「寒かったから、カゼひいたんやで。カゼ薬を飲んで寝なさい」
父の忠告を真に受けて、その日の夜、市販の漢方のカゼ薬を飲んで寝た。

翌朝、相変わらず、くしゃみと鼻水はとまらない。
もう一回飲んだほうが良いかなぁ・・・。
朝食後、漢方薬を飲み、横になっていたら、急に気分が悪くなってきた。
吐き気と悪寒、加えてひどい頭痛。

タクシーに乗って、かかりつけの医者へ駆け込んだ。
病院へ着いたときは、声も出ない状態で、診察室奥のベッドで休ませてもらった。

体温は低く、血圧が高い。
ああ、いつもの急性胃腸炎だ・・・。
だけど、変なものを食べた記憶はないし、なんだろう?

息も絶え絶えの声と、身振りで、いきさつを説明すると、
「アレルギーの薬と漢方薬で、ガッチャンコしたね!」と、M先生。

いつもの習慣で、起床後、アレルギーの薬を飲み、
あまり間をおかず、漢方薬を飲んでしまった。
そりゃ、気分も悪くなるわ・・・。

「先に頭痛をおさえてから、点滴入れようね」
肩に注射を打ってもらい、吐き気止めとアレルギーを抑える薬を入れた点滴を投与してもらった。
途中、例の漢方薬はすべてもどした。

点滴が終わったときは、まだフラフラで、M先生の問いかけにも、うやむやの回答。
「とにかく、今日は一日寝てること!」
「はい・・・」

タクシーを呼んでもらい、ヨレヨレの状態で自宅にたどり着いた。
その日は、まともに食事も摂れず、夜中まで ウンウンうなった。

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母のこと(83)

一週間ぶりに母のもとへ。

居室に入ると、
「あ、やっぱり、よりちゃん」と母。
「私って、わかった?」
「足音でわかった」
「クセのある足音だもんね」

こっそり持ってきたお菓子を広げると、
「何にも食べてないねん!」と、いつもの口癖である。
「ご飯とおやつ、食べてるでしょ?」
「それ以外、食べてない」

一日何もすることがない(気もない)母にとって、食べることだけが楽しみである。
ひと口羊羹、チョコレート、クッキー、おかき。
ああ、これじゃ食べすぎだ。
家で作ってきた紅茶を飲んだところで、ひと息。

ふと母の右手をみると、少し腫れていた。
「どうしたの?」
「男のヘルパーとケンカした」

サブリーダの女性ヘルパーさんに聞くと、
「確かに、男性のヘルパーを嫌がっておられます。手はベッドの柵をよく揺らしているので、ぶつけたんだと思います。クッションになればと思い、夜勤の合間をぬって、カバーを作りました」
「お手製ですか?」
「粗い作りですけどね・・・」
「ありがとうございます」
「男性のヘルパーですけど、このフロアには3人いるんです。嫌っておられる人は、他にもクレームがあって。ただスタッフが言っても、取り上げてもらえないので、入所者か家族さんが言ってもらえれば、すぐとおります。1Fに意見箱もありますし」
「今週、ケアマネさんとの会議が予定されているので、そのとき父に言ってもらいますわ」
「そうですね。あと、私ができるだけ様子を見に来ます」
「すみません、お願いします」

彼女は、母のことを「かわいい」と言って、気にかけてくれている。
母の普段の様子も、こと細かく教えてくれるので、よくわかる。
こういう方がいると、家族も安心だ。

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砲台グリーン

何年かぶりに、明石ゴルフ倶楽部へ。
フレンドリー会員に入っていた頃は、年に数回行っていた。
ひさしぶりなので、楽しみにしていたが・・・。

OUT 1番 パー5のグリーンで早くもつまづいてしまった。
4打目のアプローチ。
うまく打てたので、グリーンオンと思いきや、砲台グリーンだったので、オーバーした。
返しのアプローチもオーバー。
2回もオーバーすると、少し弱めに打ってしまう。
今度はグリーンにたどりつかず、加速してもどってくる。
前の組が四苦八苦していたのが、ようやくわかった。

結局、IN 12番のパー3で、パーをとった以外、さんざんなスコアだった。

ティショットも悪くなかった。
フェアウェイウッドも割と打てていた。

バンカーは・・・めちゃくちゃ湿っていたっけ。
ひどいコンディションだったなぁ。

あとは、毎ホール待ちだったこと。
後半は待ちくたびれた。
かといって、前が動かない以上、打てない。
にもかかわらず、後ろの組がすぐ傍まで迫ってきていたのには、ビックリした。

なんだかゴルフ場全体がイライラモードに包まれてるような感じ。
ここへは二度と来たくないなー。

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母のこと(82)

木曜日、母を訪ねた父が
「お母さん、元気なかってん。どうしたんやろ・・・」
と、ずいぶん心配していた。

この日は、ヨーロッパへ出張前の兄も一緒だったので、
「あ、お兄ちゃんがきた」と、一応母は喜んでいた。
だが、いつもの元気がなく、夕方うとうと眠りこんでしまった。

「やっぱり弱ってきてるんかなぁ」

心配になった。

今日、母のもとへ。
部屋に入ると、床に敷いているマットの上に座りこんでいた。
「あら、どうしたの?」
「あ、よりちゃん!」
ヘルパーさんによると、ベッドが背もたれがわりになり、楽なのだという。

「昨日下剤を飲んだので、便がたくさん出て、しんどいんだと思います」
流しを見ると、アイスノンが置いてある。
「熱が出たんですか?」
「ええ。7度5分くらいだったので、冷やしました」
「食欲はどうですか?」
「ご飯は半分くらい。おかずはほとんど召し上がられます。あと、おやつは全部。もうすぐおやつなので、こちらにお持ちしますね」

母は、車椅子に移り、おやつのシュークリームを美味しそうに食べた。
(こっそり持ってきたモロゾフのフィアージュ、ストロベリーチョコも。
お菓子はヘルパーさんに預けるルールなので、こっそり、である。)

「お母さん、紅茶も飲まないと」
私にもミルクティーを入れてくれていたので、飲んでみたが・・・薄~く、味のない紅茶だった。
「あんまり美味しくないね」
「水くさいねん」
「1Fのラウンジに行く?  あそこの紅茶なら、美味しいんじゃない?」
「あんまり変わらん」
「あら、そうなの?」

お見舞いの電話をくださった方々の話をすると、母は嬉しそうに聞いていた。
「ミヤちゃんって、銀行員の娘さんでしょ?」
「そう。銀行一家」
「タミちゃんはお米屋さんやった?」
「米屋みたいなもんやね。皆、お金持ちやった」
「お母さんは、勉強がよくできたから、一目置かれてたのよね」
「そうや。ウチは兄妹も多いし、家庭教師もつけてもらえないから、一生懸命勉強したわ」
「ハルエちゃんの手紙にも書いてあった。夜遅くまで勉強してたって」
「ハルエちゃんから手紙きたん?」
「電話もくれたよ。大阪に来るとき、神戸に寄るって」
「ほんまー。私、忘れ去られてないんやね」
「そうよ。M先生の奥さんも、心配してたし、美容院の先生も、ご近所のKさんも」

しばらく楽しそうに話していたが、疲れたのか、ぐったりしてしまった。
ベッドに横になり、お腹をさすっていると、うとうとと眠りこむ。
ときどき苦しそうにし、声をかけても返事がない。
声を出す元気もないようだ。

だんだん弱っていくのだろうか・・・。
このまま母がいなくなったら、どうしよう。

母の前では泣くまいと、ずっとガマンしていた。
が、涙がこぼれとまらなかった。
気配を感じた母が目をさました。

「お母さん、元気になって」
「元気になりたい!」
「あ、お母さん、声が出た」
「さっきは死にそうなほど苦しかってん」
「下剤がきつくて、脱水症状になったんとちがう? 看護師さんに『下剤の量を減らしてください』って、お願いしといたからね」

母は少し元気になり、車椅子に移り、食堂で夕食。
ふりかけご飯(ふりかけは持参)に、肉じゃが、お豆腐、もずく、そして、お味噌汁。
私より豪華な食事だ。

いつものように、「じゃあ、またね」と、手をふり、帰ってきた。
寂しがりやの母も、スプーンを持った手でふりかえしてくれた。

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母のこと(81)

母が入院中、親しい友人や近所の方から、たくさんのお見舞いをいただいた。
遠路はるばる病院へ見舞ってくださった方も。
退院したとはいえ、快気祝いでもない。
そこで、病院から特養へ移ったことを添えて、心ばかりの御礼の品をお送りすることに。

御礼状や住所の準備もあるので、今日は休暇をとった。
前日に住所の整理をしておきたかったが、帰りが遅くなり、
朝から年賀状やら手紙をさがした。
お一人だけ住所がわからなかったので、電話をしてお聞きしたら、
訃報かと驚かれてしまった。
近況を話すと、ついつい長電話となり、気がつくと、もうお昼。

午前中に膝を診てもらうつもりだったが、もう間に合わない。
予定を変えて、皮膚科へ向かったあと、大丸へ行くことにした。

御礼の品は、母がいつも利用していたメリーチョコレートのマロングラッセ。
現金のお見舞いをくださった方にはチョコレートも添えた。
店員に手伝ってもらい、十数件の送り状を書き、手渡しするものは持ち帰ってきた。

夕方、膝を診てもらうため、かかりつけの病院へ行き、診察後、大先生の奥さんにお会いした。
母とは、独身時代から茶道をつうじての友人である。
私も小さい頃から大先生に診てもらっているので、ご夫婦で可愛がってくれている。
インターフォンを押すと、ひょこっと顔を出し、いつもの笑顔で迎えてくれた。

「大先生と奥様には、ずいぶんご心配をおかけしましたが、先月末、特養に入所しました。これまで本当にありがとうございました」
私の報告を聞くと、満面の笑顔をうかべ、
「良かったわねー。お母さんのことは気にかかっていたけれど、あまり聞くと、よりこちゃんの負担になると思って、ひかえてたの」と奥さん。
「去年は、そりゃもう、心身ともに大変でした。N病院に大腿骨骨折で入院したときは、まだ迷ってたんですけど、院長が『外泊させて様子をみたら?』と仰ってくださって、そのとき『もう在宅介護はムリだ』と決断したんです。父を説得し、12月に特養を見学して、年明け申し込んだら、2月に入所が決まって。こんなに早く決まることはないって、ケアマネさんも驚いてました」
「ほんとね。お母さんのことは大切だけど、これから生きていく貴女は、もっと大変なんだから」
「ええ。以前、施設へ入れてみたら、母も私も楽になるって仰ってくださったことがわかりました」
「そうでしょう。私も母や叔母のことで、ずいぶん苦労したもの」

奥さんからは、幾度となく、施設へ入所しては? と勧められていた。
が、どうしてもふんぎりがつかなかった。
約2年間、在宅介護を続け、N病院に入院したとき、その言葉の意味が理解できた。
時間の経過とともに、介護の負担は大きくなり、睡眠時間もとれないから、ささいなことで苛立ち、母にあたっていた。
母もつらかっただろう。
お互い距離を置くことも必要なのだ。

「大先生は、具合いかがですか?」
「足が弱ってしまってね。身体が右に傾いてて、昨日もバタっと倒れちゃったの。あの人には『私が弱ったら、施設に入ってちょうだい』って言ってあるの」
「大先生は、きっと『ママも一緒でないとイヤだ』って仰いますよ」
「そうなのよー。ほんと、私がいないとダメな人だから、困っちゃうわ。だけど、ほんと年をとったって思うわ」
「私も母がいつまでも元気だと思いこんでいたので、全然異変に気づかなくて。もっと早くに気づいていればって後悔してます」
おさえていた感情がこみあげてきた。涙がこぼれて、とまらない。

「そうじゃないわよ、よりこちゃん。お母さんがギリギリまで頑張ってくれて良かったのよ。あの性格だから、早くから世話なんてしてたら、大変なことになってたわよ」
「そうでしょうか・・・」
「そうよ。そう思いなさい。よりこちゃんが一人でお母さんの世話をして、お父さんのことも看てるんだから。お兄ちゃんは遠くにいて、何もしてくれないでしょ?」
「ええ・・・」
「よくやってるわよ。つらいことばっかりじゃないわよ、きっと。だから、元気でいないとダメよ」
「その点は、具合の悪いとき、若先生に診ていただいてますから。今日も膝の水、抜いてもらいました」
「今度、お母さんのお顔を見に行くわ」
「ありがとうございます。家に帰りたいって、ダダこねるかもしれませんけど」
「あらあら、困った人ねぇー」
「あと、気持ちですけど、大先生と召し上がってください」
「あら! メリーね。嬉しいわ。ありがとうございます。お母さんのことを思い出しながら、主人といただくわ!」

帰宅して、御礼送付リストを作成し、父に報告した。
「送らなきゃって、気になってたから、やれやれですわー」
「ご苦労さんやったな」
「明日から、御礼の電話がかかってくると思うけど、よろしくね」
「それも、かなわんなー」

送り主は父なのだから、それくらいしてもらわないと。
ともあれ、ひとつ 肩の荷がおりた。

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3月 合同月例

1月の合同月例以来、ゴルフクラブを持った。
ボールに当たるか? と不安をかかえながら、OUTのスタートホールへ。
ゆっくり慎重にドライバーを振った。
まっすぐ当たった。
良かった!

が、左膝が痛い。
水がたまっているような感覚である。
まわっているうちに、だんだん痛みがひどくなってきた。
とりあえず湿布をはり、痛みを紛らわした。

ムリをしなかったせいか、大たたきすることなく、ハーフ終了。
お昼は、天津飯セット 1,150円。
春巻と杏仁豆腐がついてるので、お得感あり。

午後からは、左膝がますます痛くなり、足をひきずりながらのラウンドとなった。
ティショットは良いのだが、セカンド以降が問題。
前日の雨でドロドロ。
しかも、あちこちイノシシが荒らし放題なので、
コースコンディションがとにかく悪い。

良かったことといえば、バンカーショットはすべて1回で出たことかなぁ。
終わってみれば、1月と変わらぬスコア。
まあ、今の実力ってとこかな。

それより、膝の水抜きをしないと。
明日、病院へ行こうっと。

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母のこと(80)

特養にいる母のもとへ。
共同談話室でヘルパーさんと話をしていたら、
部屋から母の声が聞こえてきた。

「折りたたみテーブル、○△※◇*、よりこー」と叫んでいる。
部屋に入ると、「あ、来てくれて良かった」と母。
「何叫んでたの?」
都合が悪いことには答えない。
「昨日からお腹が痛いねん」
「お腹痛いの? とよすのお八つを持ってきたけど、食べられないね」
「食べたら治る。何も食べてないから、お腹すいてるせいや」
ひとつ渡すと、ポリポリ食べ始めた。
喉につめては大変なので、お茶をもらってきた。

それから、ニトリから送っておいた折りたたみのテーブルと椅子を部屋に設置することに。
これが結構重く、首・肩・腰・膝に激痛!
「ああ、もう! 重労働ばっかり!」
横で母が「私は何もできひん・・・」とつぶやいた。
「お母さんに言ってないよ。お父さんとお兄ちゃんに言ってるの」
設置がおわり、息つくヒマもなく、今度は追加で持ってきた服をかたづけた。

母がまた「お腹が痛い」と言う。
ヘルニアが出ているせいでは? と思い見ると、やはり出ていた。
ベッドに横になってもらい、お腹をさすった。
普通、しばらくすると、ヘルニアはひっこむが、なかなかひっこまない。
あまりにも痛がるので、看護師さんに診てもらった。

「ぽっこり出てますね。ちょっとリラックスしてください」
「痛くて、できない。痛い! 痛い!」
こういうとき、母は大げさに叫ぶ。
手を握り、「力ぬいてー」と声をかけてみるが、痛い痛いを連発。
見ているこっちも痛くなってくる。

「あ、ひっこんだ」と看護師さん。
「ほんと。お母さん、ひっこんだよ」
「そやけど、まだ痛い」
「少ししたら、痛みが消えてきますからね」
「痛い」
「お母さん、痛みがとれたら、おやつのマドレーヌを食べようね」
「うん・・・」

やがて痛みがとれたのか、母は起き上がり、マドレーヌを食べ、紅茶を飲んだ。
食べることだけが楽しみの母。
食べ終わると、またブツブツ言い出す。
私も疲れてきた。
「少し横になったら? いま何時かな?」
母は時計を見て、「4時。4時ちょっと前」と答えた。
まだ時間はわかるようだ。
「夕食は6時でしょ。それまで寝たら?」
「そうしようかな・・・」

横になった母の身体をなでていると、母はうつらうつらし始めた。
私は、そーっと部屋をあとにした。
起きたら、また叫ぶかもしれないので、ヘルパーさんによくお願いして帰った。

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ふなのみくす

紀伊国屋書店で衝動買い。
「ふなのみくす」DVD。
本編55分+特典映像6分は、ちょっと中だるみ感ありだったけど、
ぼーっと見るのには良いかな。
20140301

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