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母のこと(80)

特養にいる母のもとへ。
共同談話室でヘルパーさんと話をしていたら、
部屋から母の声が聞こえてきた。

「折りたたみテーブル、○△※◇*、よりこー」と叫んでいる。
部屋に入ると、「あ、来てくれて良かった」と母。
「何叫んでたの?」
都合が悪いことには答えない。
「昨日からお腹が痛いねん」
「お腹痛いの? とよすのお八つを持ってきたけど、食べられないね」
「食べたら治る。何も食べてないから、お腹すいてるせいや」
ひとつ渡すと、ポリポリ食べ始めた。
喉につめては大変なので、お茶をもらってきた。

それから、ニトリから送っておいた折りたたみのテーブルと椅子を部屋に設置することに。
これが結構重く、首・肩・腰・膝に激痛!
「ああ、もう! 重労働ばっかり!」
横で母が「私は何もできひん・・・」とつぶやいた。
「お母さんに言ってないよ。お父さんとお兄ちゃんに言ってるの」
設置がおわり、息つくヒマもなく、今度は追加で持ってきた服をかたづけた。

母がまた「お腹が痛い」と言う。
ヘルニアが出ているせいでは? と思い見ると、やはり出ていた。
ベッドに横になってもらい、お腹をさすった。
普通、しばらくすると、ヘルニアはひっこむが、なかなかひっこまない。
あまりにも痛がるので、看護師さんに診てもらった。

「ぽっこり出てますね。ちょっとリラックスしてください」
「痛くて、できない。痛い! 痛い!」
こういうとき、母は大げさに叫ぶ。
手を握り、「力ぬいてー」と声をかけてみるが、痛い痛いを連発。
見ているこっちも痛くなってくる。

「あ、ひっこんだ」と看護師さん。
「ほんと。お母さん、ひっこんだよ」
「そやけど、まだ痛い」
「少ししたら、痛みが消えてきますからね」
「痛い」
「お母さん、痛みがとれたら、おやつのマドレーヌを食べようね」
「うん・・・」

やがて痛みがとれたのか、母は起き上がり、マドレーヌを食べ、紅茶を飲んだ。
食べることだけが楽しみの母。
食べ終わると、またブツブツ言い出す。
私も疲れてきた。
「少し横になったら? いま何時かな?」
母は時計を見て、「4時。4時ちょっと前」と答えた。
まだ時間はわかるようだ。
「夕食は6時でしょ。それまで寝たら?」
「そうしようかな・・・」

横になった母の身体をなでていると、母はうつらうつらし始めた。
私は、そーっと部屋をあとにした。
起きたら、また叫ぶかもしれないので、ヘルパーさんによくお願いして帰った。

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