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母のこと(81)

母が入院中、親しい友人や近所の方から、たくさんのお見舞いをいただいた。
遠路はるばる病院へ見舞ってくださった方も。
退院したとはいえ、快気祝いでもない。
そこで、病院から特養へ移ったことを添えて、心ばかりの御礼の品をお送りすることに。

御礼状や住所の準備もあるので、今日は休暇をとった。
前日に住所の整理をしておきたかったが、帰りが遅くなり、
朝から年賀状やら手紙をさがした。
お一人だけ住所がわからなかったので、電話をしてお聞きしたら、
訃報かと驚かれてしまった。
近況を話すと、ついつい長電話となり、気がつくと、もうお昼。

午前中に膝を診てもらうつもりだったが、もう間に合わない。
予定を変えて、皮膚科へ向かったあと、大丸へ行くことにした。

御礼の品は、母がいつも利用していたメリーチョコレートのマロングラッセ。
現金のお見舞いをくださった方にはチョコレートも添えた。
店員に手伝ってもらい、十数件の送り状を書き、手渡しするものは持ち帰ってきた。

夕方、膝を診てもらうため、かかりつけの病院へ行き、診察後、大先生の奥さんにお会いした。
母とは、独身時代から茶道をつうじての友人である。
私も小さい頃から大先生に診てもらっているので、ご夫婦で可愛がってくれている。
インターフォンを押すと、ひょこっと顔を出し、いつもの笑顔で迎えてくれた。

「大先生と奥様には、ずいぶんご心配をおかけしましたが、先月末、特養に入所しました。これまで本当にありがとうございました」
私の報告を聞くと、満面の笑顔をうかべ、
「良かったわねー。お母さんのことは気にかかっていたけれど、あまり聞くと、よりこちゃんの負担になると思って、ひかえてたの」と奥さん。
「去年は、そりゃもう、心身ともに大変でした。N病院に大腿骨骨折で入院したときは、まだ迷ってたんですけど、院長が『外泊させて様子をみたら?』と仰ってくださって、そのとき『もう在宅介護はムリだ』と決断したんです。父を説得し、12月に特養を見学して、年明け申し込んだら、2月に入所が決まって。こんなに早く決まることはないって、ケアマネさんも驚いてました」
「ほんとね。お母さんのことは大切だけど、これから生きていく貴女は、もっと大変なんだから」
「ええ。以前、施設へ入れてみたら、母も私も楽になるって仰ってくださったことがわかりました」
「そうでしょう。私も母や叔母のことで、ずいぶん苦労したもの」

奥さんからは、幾度となく、施設へ入所しては? と勧められていた。
が、どうしてもふんぎりがつかなかった。
約2年間、在宅介護を続け、N病院に入院したとき、その言葉の意味が理解できた。
時間の経過とともに、介護の負担は大きくなり、睡眠時間もとれないから、ささいなことで苛立ち、母にあたっていた。
母もつらかっただろう。
お互い距離を置くことも必要なのだ。

「大先生は、具合いかがですか?」
「足が弱ってしまってね。身体が右に傾いてて、昨日もバタっと倒れちゃったの。あの人には『私が弱ったら、施設に入ってちょうだい』って言ってあるの」
「大先生は、きっと『ママも一緒でないとイヤだ』って仰いますよ」
「そうなのよー。ほんと、私がいないとダメな人だから、困っちゃうわ。だけど、ほんと年をとったって思うわ」
「私も母がいつまでも元気だと思いこんでいたので、全然異変に気づかなくて。もっと早くに気づいていればって後悔してます」
おさえていた感情がこみあげてきた。涙がこぼれて、とまらない。

「そうじゃないわよ、よりこちゃん。お母さんがギリギリまで頑張ってくれて良かったのよ。あの性格だから、早くから世話なんてしてたら、大変なことになってたわよ」
「そうでしょうか・・・」
「そうよ。そう思いなさい。よりこちゃんが一人でお母さんの世話をして、お父さんのことも看てるんだから。お兄ちゃんは遠くにいて、何もしてくれないでしょ?」
「ええ・・・」
「よくやってるわよ。つらいことばっかりじゃないわよ、きっと。だから、元気でいないとダメよ」
「その点は、具合の悪いとき、若先生に診ていただいてますから。今日も膝の水、抜いてもらいました」
「今度、お母さんのお顔を見に行くわ」
「ありがとうございます。家に帰りたいって、ダダこねるかもしれませんけど」
「あらあら、困った人ねぇー」
「あと、気持ちですけど、大先生と召し上がってください」
「あら! メリーね。嬉しいわ。ありがとうございます。お母さんのことを思い出しながら、主人といただくわ!」

帰宅して、御礼送付リストを作成し、父に報告した。
「送らなきゃって、気になってたから、やれやれですわー」
「ご苦労さんやったな」
「明日から、御礼の電話がかかってくると思うけど、よろしくね」
「それも、かなわんなー」

送り主は父なのだから、それくらいしてもらわないと。
ともあれ、ひとつ 肩の荷がおりた。

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