« 母のこと(89) | トップページ | 母のこと(91) »

母のこと(90)

午前中は歯医者とマッサージへ行き、午後から母のところへ。
病室の前まで行くと、
「お父さーん!」と叫ぶ母の声が聞こえてきた。

「お母さん、どお?」
ベッドで寝ている母を覗き込むと、両手にミトンをつけていた。
点滴をはずしてしまうので、やむなくつけているとのこと。

母の目つきは険しく、昨日よりいっそう機嫌が悪い様子。
「よりこのせいで、こんな目にあわされてる。
お母さんは、よりこのために走り回ってたのに、
アンタは何もせぇへん。お腹ペコペコやのに、お米もない。
お金もないから、何も買われへん!」
空腹で、怒り爆発である。

看護師さんに「いつから食事が摂れるのか?」と聞くと、
「月曜日からです」とのこと。
明日もご飯が食べられないとなると、母の怒りは大爆発となるだろう。

「お医者さんの許可が出ないと、食べられへんよ」
「医者の言うことを聞かんでもええ! なんか買ってきて!」
「そんなこと言われたって・・・」
「アンタは昔からなんにもせぇへん。お母さんにひどい目にあわせるばっかりや。
死んでしもたらええねん」
「ワタシが死んだら、お母さん、困るんとちがうの?」
「お母さんも後から死ぬわ」

もはや何を言っても、ワタシを罵るばかり。
罵られることなど、一度もなかった。
母の怒りを受け止める度量のないワタシは、黙り込むしかなかった。
体調が悪いこともあり、ベッドの柵にもたれ、突っ伏していると、
かすかなイビキが聞こえてきた。
母を見ると、眠っている。
ひとしきり怒りをぶちまけ、疲れたのだろう。

「眠ってますので、帰りますね」
そう看護師さんに伝え、病院を後にした。

絶食はつらい。
が、なんとかのりきって、元気になってほしい。
そう願うばかりだ。

|

« 母のこと(89) | トップページ | 母のこと(91) »

母のこと」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/218569/59457335

この記事へのトラックバック一覧です: 母のこと(90):

« 母のこと(89) | トップページ | 母のこと(91) »