小説・エッセイ

「走れ、セッちゃん!」

「女3人『どんどん』」で、久しぶりに会った瑞希ちゃん。
このブログで、多くのネタを提供してもらってます。

「なんにも、しゃべること、ないわよー」
そう口をとらがせながら、けん制する瑞希。

「なに、なに?」
ツル(中高の友達)は、ワタシが瑞希ネタをブログに載せていることを知らない。
「よりこったら、母や弟のネタ(『突然、バーン!』、『忘れ物にご用心』など)を面白おかしく載せてるのよー」
「いや、面白おかしく話してくれたことを、ちょびっとだけ脚色してるのよ。だって、瑞希はお話上手だもの」

てなわけで、今夜の瑞希ネタは・・・「走れ、セッちゃん!」です。

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「走れ、セッちゃん!」               とうのよりこ


瑞希の母の実家は、長野である。
子供の頃から仲の良い友人「セッちゃん」は、長野在住だ。
今年の2月のこと。
ある夜、「セッちゃん」から電話がかかってきた。

「サクちゃん(瑞希の母)、いる?」
電話をとったのは瑞希。
名前を聞かなくても、すぐに誰かわかるくらい、「セッちゃん」は独特の言い回しである。

「ご無沙汰してます。母は、いまお風呂に入ってるんです。後ほど、折り返しお電話します」
「あら、そう・・・」
お風呂と聞いて、ずいぶん残念そうな「セッちゃん」である。

「あのね、電報を打ったから、明朝には着くと思うんだけど・・・」
「デ、デンポウ?電報ですか?」
今時、電報!? 祝電、弔電ならわかるけど・・・。
瑞希は、怪訝そうに思った。

「実は・・・、燃えてるのよ」
「燃えてる?」
一瞬、ピンとこなかった。
何が燃えてるというのか?
もしかして?
「そうなの、サクちゃんの実家が燃えてるのよ!」

衝撃的な「セッちゃん」の言葉であった。
とりあえず電話をきり、風呂場にいる母に伝えた。

「お母さん、実家が火事だって!」
「ええっ!?」

ちょうど、髪をシャンプーしていた母。
すすぎも適当に、急いであがってきた。
服に着替え、「セッちゃん」へ電話をかけた。

「もしもし、セッちゃん?」
「サクちゃん?」
「実家が火事って、どういうこと?」
「此処(「セッちゃん」の家)から見えるんだけど、勢いよく燃えてるのよー」
「ええっ!?全焼かしら?ケガ人とかいる?」
「そこまでわからないから、ちょっと見てくるわね」

「セッちゃん」は電話を切り、母の実家まで走って行った。
走ると言っても、もう年なので、気持ち”走る”くらいである。
往復15分くらいかかるので、15分後、電話がかかってきた。

「救急車が1台とまってたわ。誰か、運ばれてたみたい。残念だけど、全焼みたいよ」
ゼイゼイ言いながら話す「セッちゃん」。
「救急車って、誰が運ばれたのかしら?わかる?」
「ちょっと待って。聞いてくるわ」
また電話を切った「セッちゃん」。

そうなのだ。
「セッちゃん」は、携帯電話を持っていない。
だから、15分かけて、現場と家を往復し、家の電話から報告してきてくれているのだ。

「誰かわからなかったわ」
ますます息切れしている「セッちゃん」である。
「誰かしら、心配だわ」
「セッちゃん」の苦労もよそに、実家の心配ばかりする母。
「あとね、台所付近は残ってるみたいよ」
「ええっ!?全焼じゃないの?」
「う、うん・・・と思う」

この勢いだと、母はまた「セッちゃん」を現場に走らせかねない。
あまりにも気の毒なので、瑞希は母に
「夜も遅いから、明日にしたら?」と言った。

ハタと我にかえった母。
「そうね、そうね」と頷き、
「知らせてくれて、ありがとうね、セッちゃん」
「いいのよ、サクちゃん。また何かわかったら電話するわね」

翌朝、親戚から電話がかかってきた。
「火事だってね」と母が言うと、
「なんで知ってるの?」と、驚く親戚。
「まあね・・・」

何が「まあね・・・」だ。
ライブ中継してくれた「セッちゃん」のおかげではないか。
ほんとに、「セッちゃん」様々である。

後日、全員無事であるとわかった。
救急車で運ばれたのは、従妹。
荷物を運び出そうとして、煙を吸ったらしい。
軽く吸っただけだったので、すぐ退院した。
台所以外は燃えてしまったが、家族全員無事だったので、瑞希も両親もほっと胸をなでおろした。

ところで、「セッちゃん」が送ったという電報。
未だに、瑞希家には届かない・・・。

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伯母の一生(2)

従姉が差し出した3枚の写真。

1枚目は、若かりし頃の伯父と伯母。
誰かの結婚式に出席したときのものだろう。
伯父はモーニングコート、伯母は黒留袖を着ている。

「伯母ちゃんの笑顔、とってもキュートね」

なんというか、写真慣れしたような笑顔である。
鏡に向かって、笑顔の練習をしている様子が想像できる。

2枚目は、晩年の2人。
黒部ダムへ家族旅行をしていた時のもの。
年を重ねても、笑顔は相変わらずキュート。

「母がパーキンソン病になって、『これが最後の旅行になるかもなぁ』って、父が連れて行ってくれたんよ。その父が先に逝っちゃったんだけどね」
従姉の顔が少し曇る。
なんとも言いがたい。

3枚目は、介護の家で撮影したもの。
遺影にもなった写真だ。
明るい人柄がよく表れている。

「知ってる?伯母ちゃんは若い頃、”ライオンさん”って呼ばれてたんだって」
そう言うと、従姉が怪訝そうな顔をした。
「ライオンさん?」
「うん。今の会社に就職した時、当時の社長が伯母ちゃんのことをよく知ってて、『アンタの伯母さん、”ライオンさん”で有名やったんやで。あの”ライオンさん”の姪御さんかいなー』って言われたの。理由を聞くと、『いつも派手な洋服を着て、パーマをかけたふわーっとした茶色の髪の毛やったから、そんなあだ名がついたんや』って言うの」

従姉はビックリして
「ええーっ!?ウチの母親って、不良だったの?」
と言った。
不良という表現もおかしいが、まあ当時としてはそうだったのかもしれない。

「社交ダンスが得意だったんでしょ?その話も聞かされたわ」
「そうやねん。ダンスが好きで、遊ぶことが大好き。やっぱり不良やわー」
「ダンスで伯父ちゃんと知り合って結婚したんでしょ」
「そうそう」

従姉と私の話を聞いていた叔母(末っ子)が
「お姉ちゃんね、クリスマスの時期になると、ダンスパーティ用の貸衣装のドレスを部屋に吊り下げてたわ。当時、つけまつげを着けてる人なんて珍しかったのに、いち早くつけたんよ」
と笑いながら話してくれた。
「貸衣装のドレスに、つけまつげ?アハハハハ、いかにも伯母ちゃんらしい!なんか想像できるわー」
「お肌の手入れも念入りにしてたから、いつもツヤツヤだったしね」

ふと遺影に目をやると、本当にツヤツヤした肌をしている。
最期に見た顔も、キレイだった。


伯母ちゃん、人生を謳歌しましたか?
幸せだった?
ここにいる皆は、「好きなことをして生きてきた人だから、幸せよ」なんて笑ってるけど。
ずっと心配してた娘夫婦と孫も大丈夫みたいよ。
あの世で、お祖母ちゃん、伯父ちゃん達と見守ってくださいな。
あんまり我が儘、言わないようにね。


遺影を見ながら、そんなことを思った。
伯母の享年は、奇しくも祖母と同じ年であった。

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伯母の一生(1)

1/16の夕方、伯母の訃報が届いた。

伯父に先立たれてからの4年間、伯母は介護の家で悠々自適の生活を送っていた。
暮らしていた部屋は、トイレ完備の広々とした個室。
伯父が生前、「もしものときは・・・」と施設を調べ、数千万かかる入居金を用意し、月々の費用(10数万)も算段してくれていたのだと、一人娘である従姉から聞いた。

晩年、伯母はパーキンソン病を患っていた。
「たぶん、あいつ(伯母)のほうが先に逝くだろうなぁ」
そう考えていた伯父であったが、ある時ガンが発見された。
手術で一時的に回復したが、すぐ再発した。
おそらく、壮絶な痛みに苦しんでいたと思うが、
病に臥していても、伯母の介護をしていた。
そして、苦しんで苦しみぬいて、伯父は亡くなった。

物静かな伯父と違い、伯母は明るく我が儘な性格であった。
6人きょうだいの2番目で、長女。
長年、子供が出来なかった祖父母は、伯母が生まれる前に男の子を養子として迎えていた。
養子を迎えたとたん、子供が出来、伯母が生まれた。
待望の実子である。
それこそ目の中に入れても痛くないほど、祖父母は伯母を可愛がり、何をしても叱らず、結果、我が儘に育ってしまった。

面白いことに、伯母が生まれたあと、祖母は母、叔母、叔父、叔母を産み、結局6人の子宝に恵まれたことになる。
長女である伯母と末っ子の叔母は、18歳年が離れている。
親子ほど離れている姉妹なら、末っ子の面倒は長女が見るだろうと思うが、伯母は違った。

「そんなん見るヒマないわ。遊ぶのに忙しいのに」
ケロッと言うような人だった。

因みに末っ子の面倒を見ていたのは、我が母である。

さて、年末のこと。
肺に水がたまったので手術するという連絡があり、母ともども心配していた。

様子を見に行った叔母(末っ子)から
「水ぬいたら、ピンピン元気に、ご飯にお菓子を食べてるわー」
と電話があった。

「さすが、伯母ちゃん。すさまじい生命力だわ」
母と二人、苦笑した。
「お見舞いに行かないとね」と話をしていたが、忙しさにとりまぎれ、
「年が明けたら」「もう少し暖かくなったら」と延ばし延ばしになっていた。

そんな時、急変したとの電話があり、あっけなく亡くなってしまった。

従姉から、末期の肺ガンだったと聞いた。
「年末に転倒して、軽いケガですんだんよ。ただその時、ヒューヒューって変な音がするから、MRIで検査してもらったの。そしたら、末期の肺ガンだっていうの。肺にたまってた水を抜いたら、痛みもなくなったみたいで、お正月もお節を食べて、元気だったんだけど、少しずつかな。衰弱していって。目を閉じたまま、ゆすってもなかなか目を開けてくれない時が増えていった」
「最期は苦しんでたの?」
「ううん、苦しいっていうのはなくて、眠るように亡くなっていったの。でも、私も最期は間に合わなかったんだけどね」
「苦しいのは、伯父ちゃんが引き受けてくれたのかなぁ」
「そうかもしれない。父親は、母のことを心配してたから」

キレイな死に顔だった。
生前から高齢の割には、肌も髪もツヤツヤしていて、オシャレな伯母であったが、棺の中で眠る顔も、穏やかであった。

「お祖母ちゃんの顔に似てるわ」
そう呟くと、
「あ、ウチの母がお祖母ちゃんに一番似てるものね」と、従姉。

そして、バッグの中から古い写真を3枚、取り出した。

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瑞希こぼれ話(3) 「Wii ジャンプ!」

瑞希ママ(瑞希のお母さん)にもこれまで当ブログにご登場いただいている。

☆小説「間違えられた弟」
http://tohnoyoriko-world.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_4d26.html

☆小説「忘れ物にはご用心!」
http://tohnoyoriko-world.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_c2f5.html

☆小説「突然バーン!」
http://tohnoyoriko-world.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_498d.html

エッセイ「我が家にWiiがやってきた」は、1話で頓挫しちゃったけど、瑞希家ではゴルフ、ボーリングで大いに盛り上がり、今はジャンプがお気に入りとか。

「ジャンプは、タイミングを合わせるのが難しいのよね」

Wii未体験のワタシとしては、テレビのCMで見る限りなので、
「Wiiフィットの上を飛ぶわけじゃないでしょ?」
と聞いてみる。

「飛ばない。飛ぶ瞬間に、ちょっと浮かすっていうのかな」

なるほど。

「母が一番面白いんだけど、飛ぶ瞬間、画面にあわせて、『フゥンッ!』って、鼻息たてて、ジャンプポーズをとるの」

目に浮かぶようだ。

「で、飛距離がのびて着地したら、『ワーッ!』って、歓声が上がるでしょ。そしたら、満面の笑顔で、手を振って、歓声にこたえてるのよ」

お腹をかかえて笑ってしまった。

「別に自分が飛んでるワケでもないのにさー。『どうだ!』って表情で」

いやはや。
毎度のことながら、瑞希ママ話は、笑えます。
一度、ご一緒にジャンプしたいものデス。

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瑞希こぼれ話(2) 「前世はロシア人?」

つきあい範囲が幅広い瑞希姐さん。
ある時、「癒し系フェア」なるものに行ってきたという。

「バランスボールを習ってる先生が出展するっていうから、サクラよ、サクラ」

ダイエットのため、バランスボールを始めたという。

ちょっと脱線するが、バランスボールって、どうやって送られてくるか?
答え: 折りたたんだ状態で、空気入れと同封されてくる。
ワタシはてっきり、ボール状態で送られてくるもんだと思ってた。

「そんな、あんなデカいボールの状態で送られてくるワケないでしょー」
「だって、おっきな箱に入ってくるのかなーと思ったんだもーん」
「アナタも、天然ね・・・」

さて話はもどり、「癒し系フェア」へ。
ぐるりと会場をまわっていると、いろいろなブースがある。
いかにも怪しげなモノ売りには近づかず、何か面白いモノはないかしら。

ふと目に入ったのは、「ワンコインで前世占い」の看板。
ワンコイン、つまり500円である。
まあ、500円なら・・・と、座ってみた。

「このフェア限定なので、2つだけ占ってさしあげます」
という前置きがあり、おもむろに世界地図を広げる前世占い師。
取り出したのは、水晶ペンダント。
そして、世界地図の上をゆらゆらと動かしていく。

「ん?」
占い師が唸る。
ペンダントがブルブルと揺れている。
瑞樹も息をのむ。

「ここ、ですね」
占い師はそう言って、指差した。
「ロシア?」
「そう、ロシアです。ほら、他の国では揺れないでしょう。でも、ロシアの上にくると、ペンダントが揺れます」

占い師は、目を深く閉じ、深呼吸をして、大きく息を吐き、そして目をカッと見開くと、
「あなたの前世は、900年前のロシア人・・・男性です!」と云った。

「900年前?ロシア人男性?ってことは、私は900年前から、一度も転生することなく、やっとこさ、日本人女性に生まれ変われたんですか?」

「いやいや、何度も何度も転生されましたよ」と、ニヤリ。
「でも、それを全部見るのは別料金です」と、更ににんまり。

「もうひとつだけ占ってさしあげましょう」
「じゃあ、900年前は何をしてたんですか?」
「運び屋です」
「運び屋?何を?」
「そこまではわかりません」

要は、あとは別料金。
名刺をもらって帰ってきたという。

「でもさー、900年前のロシアって、想像つかないよね」と、瑞樹。
「そうねー。何時代かな?」
「日本は、平安時代でしょ。あ、ピョートル大帝のとき?」
「それは17,8世紀でしょ。ロマノフ王朝よ」
「チンギス・ハーンは?」
「13世紀初めのほうだから、まだもっと前ね」

はてさて、900年前のロシアって・・・?
想像がつかないと、2人して断念した次第。。。

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瑞希こぼれ話(1) 「クローゼットの地層」

ほぼ1年ぶりの瑞希とのご飯。

「提供できるネタなんて、ないわよー。
 最近、電化製品もこわれてないし」

そう言いながら、小ネタをさがしてくれる優しさ。

瑞希こぼれ話を連載していきます。happy01

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「クローゼットの地層」

自他とも認めるミーハーな瑞希。
とはいえ、彼女がミーハーだと気づいたのは、ディカプリオ主演映画「タイタニック」の頃。

「レオちゃん~」と連呼するので、「ジャングル大帝のレオ?」なんて、オヤジギャグをとばそうものなら、張っ倒されかねない。

「はいはい、レオナルド・ディカプリオでしょ」
「かっこいいのよー」
「確かに」
「タイタニック、見た?」
「まだ・・・。最後どうなるの?」
「え?結末知ったら、面白くないじゃない」
「そうだけど・・・」

結末を聞きたがる性分のワタシ。
それを聞いても面白いなと思えば、見に行くタイプ。

「沈むのよ」
「船がでしょ?」
「レオちゃんも」
「あら、ま」
「泣くのよ。号泣するの」
「かわいそうね・・・」
「でも、また見たくなるの」

ここで、アタマに浮かぶ「?」マーク。
「また・・・って、何回も見たの?」
「そう。今日もひと泣きしてから出社した」

当時の瑞希は、勤務先がフレックスで午後出勤の日というのがあった。
だから、映画を見てから出勤も可能なワケ。
結局、「タイタニック」は通算20回見たらしく、当然それだけにとどまらず、「レオちゃん」に費やしたお金も相当なもの。

「ワタシのクローゼットは、ファン地層が出来てるのよ」
「レオちゃんから始まるのね?」
「ううん。第1地層はタカラヅカで、第2地層がレオちゃん。第3地層がガクトで、第4地層がジフン君。で、今は東方神起なんだけど、解散しそうなのー」

おやおや。
その地層、どこまで積み上がるんでしょうね。。。

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「雨の日の思い出」

コネタマ参加中: 線香花火のような、はかなく切ない思い出募集

下校の時間になって、急な雨。

「雨やー。ショック!天気予報、雨や、言うとったんか?」
「天気予報、見とうんか?」
「言うてみただけや。カサ持ってきてへんねん」
「オレもや。家まで競争やなっ」

そんな同級生の会話を聞きながら、ワタシは友人と家路へ。
「朝、お母さんにカサ持っていき、言われてん。持ってきてよかった」
「ほんまやねー」
「天気予報、見てる?」
「うーん・・・。あんまり見てへん」
「ワタシも。遠足の時は見るけど」
「おんなじ」

途中で「じゃあ、また明日ね。バイバイ」と、いつもの場所で友人とわかれ、自宅へ向かった。

お母さん、いるかなー。お買い物行ってるかなー。
小学生の頃、まだ家のカギを持たされていなかったため、母が不在の時は、祖母の家へ向かうようにしていた。
門の扉は閉まっていた。
やっぱり、母はいない。
どうしようかな、お祖母ちゃんのところへ行こうかな。
しばらく、家の前で待っていようかな。

そんなことを考えていると、見慣れた顔が見えた。
ひとつ年上のR君。

家も近所で、同じピアノ教室に通っていた。
母親同士が呼ぶせいだろうか。
彼も、最初からワタシのことを名前で呼び、えらくなれなれしかった。
ピアノ教室でおしゃべりしたり、たまに休み時間、運動場で遊ぶこともあった。
が、ひとつでも学年が違う男子と遊んでいると、
「6年生と遊んでたやろー」
などと同級生にからかわれ、そう言われるのが鬱陶しくもあった。

ある日、ちょっとした言い合いになった。
たわいもないことで、ケンカでもない。
ちょうどベルが鳴ったから、「じゃあね」と急いで教室に戻ろうとすると、背後からものすごいチカラで引っ張られた。
「授業が始まるよー」と言ったとき、初めて状況に気づいた。

R君に抱きしめられている。
な、なんで!?
アタマが真っ白になった。
同時に、通り過ぎていく生徒の目が気になり・・・。

そう、ここは小学校。
そして、その運動場の真ん中。
全校生徒の見守るなかで、男子生徒に抱きしめられている。
ワタシは5年生で、彼は6年生。
まだラブシーンを演じるには、コドモだ。

「やめて」という声すら出ず、長い時間に感じた。
しばらくして、R君のチカラが抜けたので、彼の腕をふりほどき、急いで走り出した。

教室に帰ると、ヤンヤの騒ぎ。
「わーっ!抱きしめられてやんの、コイツ!」
盛んに茶化す同級生の男子。

「うるさいっ!!!」
怒鳴ると、しーんとした。
コソコソ話をしている様子だったが、それを相手にする気にもなれなかった。

恥かしかったし、腹も立っていたし、なんであんなことをしたのかわからなかったし、
それに・・・それに・・・。

以来、R君とは顔を合わさないようにした。
姿が見えると、物陰に隠れ、ピアノ教室の時間もずらした。

だけど、今日は家の前。
扉は閉まっているし、向こうも気づいているし、今更隠れるところもない。
見ると、R君はカサを持っていないので、ずぶ濡れ。

一歩一歩近づいてくる。
どうしよう・・・、どうしよう・・・。
ワタシはカサを握りしめたまま、R君の顔を見つめた。
彼もワタシを見たまま、通り過ぎていった。

「カサ、どうぞ」

そのひと言がどうして言えなかったのだろう。
あんなことがあったとはいえ、ずぶ濡れの幼馴染。
逆の立場なら、カサをすっと貸すのは道理だ。

なのに、その言葉が出てこなかった。
しばらく、彼の背中を見送ったが、ワタシを振り返ることもなく、やがて曲がり角で姿は消えた。

R君は、先に小学校を卒業し、公立中学へ進んだ。
1年後、ワタシは私立中学へ進学したため、会うこともなくなった。
ピアノ教室も、時期のずれはあるが、二人とも辞めてしまった。

高校は進学校へ、大学は東北へ進学したと聞いた。
何年かして、結婚したとも、子供が産まれたとも聞いた。
本人からではない。
母から聞いたり、彼のお母さんから聞いたり。

彼のお母さんには今でも時々、道で会う。

しかし、彼に会ったことはない。
あの日、あの雨の日以来、一度も・・・。

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メガネを買いに(4)

世界中の子供たちを笑顔にしたい。
BYJ meganeichiba Smile Project
      I Wish

そう書かれたポスターには、
笑顔のヨン様と子供たちがうつってます。

「眼鏡市場」の店内に飾ってあるポスターとは、
異なる雰囲気。
だけど、やっぱりヨン様スマイル。

しばらくポスターを眺めていましたが、
「ところで、肝心のメガネは?」
と母に聞かれ、思わず苦笑。

「メガネは明日のお昼には仕上がるの。
 なんだか、ポスターをもらいに行ったみたいね」
「ほんとね」

まあ、母も喜んでいることだし、
すぐメガネも仕上がってくることだし。

ただ、時間をおいて受け取ると、メガネの印象が
少し違って見えることが、ちょっと心配。
特に、衝動買いの場合は。


☆「眼鏡市場」でもらったポスター☆
   丸めていたのを撮ったので、
   ちょっと歪んでしまいました。。。
Meganeichiba_yonsama

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メガネを買いに(3)

「メガネを買いに」(1)から1年。
やっとメガネを買いました。
買うまでは、面倒くさいとか、気分がのらないとか。
先にコンタクトを買い替えたから、もうメガネは要らないとか。

その日、別にメガネを買いに出かけたわけでもなく、
たまたま「眼鏡市場」へ入り、何点かかけてみたら、
たまたま似合うメガネがあり、
「じゃあ、これ」と。

つまり衝動買い。
フレームは、セリーヌ。
ミーハーなワタシとしては、いかにもって感じかな。

お休みの日ということもあり、検査待ちに時間がかかると
いうので、番号札をもらい、先に用事をすませることに。
じーっと待ってなきゃいけないとなると、
「もういいわー」って帰ってたかもね。

「普段はコンタクトですか?」
「はい」
「ハードですか?ソフトですか?」
「ハードです」

こんな会話をしながら、検査を進めていきます。
お店の人が言うのには、
「ハードをご使用の方は、メガネの度を強くしてほしいと
 仰るんです。長時間だと疲れるので、ゆるいほうが
 お勧めですが、試しながら、決めましょう」

ソフトとハードで、そんな違いがあるのかしら。
まぁ、しっくりくるほうを選べばいいことだし。

結局選んだのは、やっぱり強い度。
ほんとに、明るくしっかり見えます。
勿論、コンタクトのほうがよく見えるけど。

普段は即日出来るけど、レンズが準備できないので、
翌日の仕上がりになるとか。
別に急がないので、
「いいですよ」と、支払いだけすませました。

手続きを終えると、店員さんがポスターを差出し、
「コドモ達とうつってるポスターです」
と解説。

そうそう。
フレームを選んだときに、
「ヨン様のポスターがあったら、ちょうだい」
と頼んだのでした。

帰宅して、母に渡すと、さっそく広げて、大喜び。
「もう、ポスターもらっても、飾るところがないわよー」
なんて言ってたくせに。

「コドモ達とうつってる」と言っていた通り、
大勢のコドモ達に囲まれて、笑顔のヨン様がうつってました。

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ひと足早いクリスマス(終)

楽しいひととき。

あたたかいコーヒーを飲み、一息ついたところで、兄が切り出した。
「さてと、そろそろ失礼しようか」
「そうね。高速(道路)も空いてる時間帯になったことだし」

運転するのは義姉。
兄は運転免許を取り損ね、甥っ子は免許取得可能な年齢に達していない。
乗せてもらっている身なのに、二人とも文句だけは人一倍。
地図を見ながら、
「こっちのほうが近道だ」
と言うとおりにしたら、一方通行を逆走しかける羽目になったり、
どんどん目的地から遠ざかったり。

カーナビをつけたので、やれやれと思ったら、
「テレビが見たい」
「面白いDVDがあるんだ」
と言う始末。
あげく、二人してグーグー寝る始末。

義姉が気の毒に思えてくる。
「ほんとに大変ねー。大きな子供を二人かかえて」
「ほんまっ!その通り!」
態度のデカい兄と、図体のデカい甥っ子。
女二人して大笑いである。

「さぁ、帰るぞー!」
兄が号令をかけると、甥っ子はまだテレビの続きを見ていたい様子で、
ゴロゴロしている。
幼い頃なら、
「ボク、お泊りする」と言うところだが、もはや高校生。
さすがにそんなことは言わない。

渋々腰をあげて、帰り仕度をした。
せっかちな兄は、
「じゃ、どうもどうも。お世話さまでした」
と帰っていき、追いかけるように、続いて義姉。

甥っ子は、いつも最後に我が家を後にする。
まず父に礼を述べてから、玄関先に居る母に挨拶する。
幼い頃から世話になった父と母には、礼儀正しい。

「有難うございました。また来ます」
「勉強、頑張りなさい。次はお正月ね」

因みに、私とは友達感覚なので、軽ーく
「じゃあね、またね」程度である。

三人が帰った瞬間、我が家は静けさをとり戻す。
「なんだか疲れたわねー」
「ほんとねぇ」
そう言いながらも、にぎやかに夕食をとり、たわいもない話をし、
一緒にテレビを見て笑う。
そんな楽しいひとときを過ごせたと、父も母も、そして私も大満足なのだ。


エッセイ「ひと足早いクリスマス」(終)〔2009年1月28日 by とうのよりこ〕

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